沖縄の住宅といえば、長年にわたって鉄筋コンクリート(RC)造が当たり前とされてきました。台風や湿気といった厳しい自然環境にも耐えうる構造であり、堅牢さと耐久性を備えた安心の住まいとして、多くの人に選ばれてきたのです。

しかし、そんな住宅の“定番”に、いま大きな変化が訪れています。りゅうぎん総合研究所の調査によると、2023年度の新設住宅着工数において、木造住宅がRC造を上回るという、これまでにない転換が沖縄県内で起きました。

その背景には、建築資材の高騰や人件費の上昇、さらに地価の上昇といった複数の要因が重なっています。住宅にかかるトータルコストを少しでも抑えたいという声が強まる中で、建築単価が比較的安く、工期も短く済む木造住宅が、現実的かつ魅力的な選択肢として再評価されているのです。

宮古島や石垣では土地価格の高騰が住宅選びに大きな影響を与えている

住まいにかかるコストを考えるうえで、建築費と並んで大きな影響を及ぼすのが土地価格です。なかでも沖縄県内では、宮古島市と石垣市の地価上昇が顕著で、他の地域を大きく引き離す伸びを見せています。

宮古島市の住宅地は、2023年に前年比12.3%の上昇(平均26,600円)を記録し、商業地でも12.4%(83,400円)と高い伸び率となりました。住宅・商業いずれの用途においても、県内で最も高い上昇率を示しており、全国的な地価変動ランキングでも上位に顔を出す水準です。

こうした価格上昇の背景には、コロナ禍明けの観光需要の回復と、島外資本の流入があります。中心市街地ではアクセスや利便性の高さが引き続き評価され、根強い需要が継続。一方で、周辺の既存集落地域にも注目が集まりつつあり、大型商業施設の開業によって生活環境が整ったことで、住宅地としての価値が見直されています。中心部に比べて割安な価格帯が残っていることもあり、購入希望者が集まり、地価の上昇に拍車がかかっているのが現状です。

家賃の高騰が背中を押す「持ち家志向」

土地価格の高騰は、賃貸市場にも確実に波及しています。かつては1Kタイプで5万円前後だった賃料が、今では8万円近くまで上昇している例も少なくありません。とくに新築のマンションや戸建て住宅では家賃がさらに高額となり、家計への負担がより重くのしかかってきています。

こうした状況のなか、「家賃を払い続けるより、自分の資産になる住まいを持った方が良いのでは」と考える方が増えてきました。実際、住宅ローンを活用することで、月々の返済額が家賃と同程度、あるいはそれ以下に収まるケースもあります。

とりわけ、フラット35などの固定金利型ローンを選べば、将来的な金利上昇や家賃のさらなる高騰といった不安から、自身の生活を守る手段にもなります。もちろん、地価が上昇している局面での購入には慎重さも求められますが、「これ以上上がる前に動いておきたい」という心理が背中を押しているのも確かです。

現代の木造住宅は地震や台風に強い安全な住まいへと進化している

「木造住宅は台風や地震に弱い」といった不安の声は、今なお根強く残っています。けれども、こうした見方は過去の印象にとどまっており、現在の木造住宅は、技術の進歩によって大きく進化しています。

特に、1981年に導入された新耐震基準、さらに2000年の改定以降は、木造住宅に対しても構造計算の実施や接合部の補強、制震装置の導入といった、安全性を高める設計が義務づけられるようになりました。こうした技術的な裏付けにより、現代の木造住宅は「地震に強い構造」として十分な信頼性を備えています。

加えて、沖縄では平屋や2階建てといった低層の建物が多く、建物の重心が低いため、揺れによる影響を比較的受けにくいという構造的な利点もあります。さらに、台風への備えという面でも、近年の設計では耐風性の高い建材や構造が用いられ、一定の基準を満たすことで安心して暮らせるレベルまで性能が高まっています。

自然環境を踏まえるとRC造住宅の価値は今も変わらない

もちろん、木造住宅の選択肢が広がってきたとはいえ、鉄筋コンクリート(RC)造の優位性が失われたわけではありません。特に高温多湿で台風の多い沖縄においては、その頑丈さと安定性がもたらす安心感は、いまも変わらず大きな魅力です。

RC造は、防音性や耐火性に優れているうえ、建物の劣化がゆるやかなため、メンテナンスにかかる手間や費用も比較的少なく済みます。結果として、長く住み続けるうえでの総合的なコストパフォーマンスにおいても、高く評価されています。

また、近年は大型台風の上陸数が減っているとはいえ、将来的な気候変動のリスクを考えると、「より高い安全性を確保しておきたい」という理由からRC造を選ぶ方も依然として多く見受けられます。

今は「木造かRC造か」という単純な二択ではなく、「どんな暮らしをしたいのか」「将来どのように住まいを維持していきたいのか」といった価値観に合わせて、多様な選択肢の中から最適なかたちを選べる時代になったと言えるでしょう。

築古のRC造物件をリノベーションするという選択肢が注目されている

宮古島では、築30年〜40年を超えるRC造住宅も多く流通しています。建築費の高騰が続くいま、「新築を建てるよりも、既存の住宅を購入してリノベーションする」という考え方に注目が集まっているのも自然な流れといえるでしょう。

確かに、築年数の経った物件では外観や内装に古さを感じる部分もありますが、RC造の建物は構造的にしっかりしているケースが多く、設備の更新や断熱性能の向上、耐震補強といった改修を行うことで、新築に近い快適さを手に入れることができます。

また最近では、住宅ローンのなかにリノベーション費用も含めて借り入れできる商品が増えており、「中古+リフォーム」という選択肢がより身近なものになりつつあります。立地や構造に恵まれた物件であれば、資産価値の面でも十分に魅力があり、合理的かつ現実的な住まいのかたちとして、多くの人に選ばれはじめています。

「いまだからこそ」の住まい選びを、最適な形で

木造かRC造かの選択は、価格だけにとどまらず、建物の性能や安全性、そして将来どのように暮らしたいかというライフスタイルまで含めて考えることが大切です。選択肢が広がった今だからこそ、自分たちに本当に合った住まいと出会える可能性も、かつてないほど高まっています。

私たち日宅では、土地探しから設計・建築、住宅ローンのご相談、さらには中古住宅の購入やリノベーションまで、住まいに関する幅広いご相談をお受けしています。地価が上昇を続けるいま、この流れを不安材料とするのではなく、“今だからこそ動く価値がある”と捉えることも選択肢のひとつです。

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