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定期借家契約のテナント利用:中途解約の可否と注意点

テナント契約にはいくつかの形態があり、その中でも「定期借家契約」は事前に設定された契約期間が満了すると退去が求められる、特定の条件を持つ契約方法です。本記事では、定期借家契約の概要から、普通借家契約との違い、さらに中途解約が可能なケースやその注意点について詳しく解説します。
定期借家契約とは?仕組みと特徴を詳しく解説
定期借家契約は、契約期間があらかじめ定められ、期間満了後に自動更新されない賃貸契約の一種です。契約期間が終了すると、借主は物件を明け渡す必要があり、再契約を希望する場合には貸主との合意が必要となります。この契約形式は「借地借家法」に基づき定められており、通常の「普通借家契約」とは異なる特徴を持っています。
普通借家契約では、契約終了後も借主が希望すれば更新でき、貸主が契約更新を拒否するには正当な理由が必要です。一方、定期借家契約は更新を前提としないため、貸主は契約終了後の物件利用を自由に計画できます。
また、定期借家契約では貸主が契約終了前に事前通知を行うことが義務付けられています。1年以上の契約では、期間満了の6カ月~1年前に通知を行う必要があり、これがない場合は契約終了を主張できないため、注意が必要です。
短期間から長期間まで柔軟に契約期間を設定できるのも定期借家契約の特徴です。例えば、ポップアップストアや季節限定の店舗運営には数カ月の契約が適しており、逆に20年以上の長期契約で安定した運用を目指すケースも見られます。このように、定期借家契約は貸主・借主双方のニーズに合わせて柔軟に利用できる契約形式です。
定期借家契約の途中解約は可能か?ルールと例外
定期借家契約では、原則として契約期間中の途中解約は認められていません。これは、契約が貸主と借主双方に公平な条件を提供するための仕組みであり、契約期間内に借主が退去することで貸主が賃料を受け取れなくなるリスクを防ぐためです。
途中解約が認められる例外的なケース
ただし、借地借家法第38条に基づき、以下の条件を全て満たす場合には途中解約が可能となります。
住宅としての利用がある場合 物件の一部をオフィスや事務所として使用しながら、住宅としても利用していること。
小規模物件であること:物件全体の床面積が200㎡未満であること。
予測不可能な事情が発生した場合:契約時には予測できなかった転勤、親族の介護、療養などのやむを得ない事情が生じた場合。
上記の条件を満たしている場合、1か月前に解約の申し入れを行うことで途中解約が認められる可能性があります。しかし、これらは主に小規模な個人事務所や住宅兼事務所に該当するケースが多く、一般的な企業には適用されにくい点に注意が必要です。
特約による柔軟な解約
定期借家契約を結ぶ際、契約書に「解約権留保特約」が記載されていれば、借地借家法の例外に該当しなくても途中解約が可能となる場合があります。このため、契約時には以下の点を確認しておくことが重要です。
特約の有無を確認:中途解約を許可する特約が契約書に記載されているかをチェックすること。
特約の内容を明確に把握:具体的な解約条件や手続きについて、貸主または管理会社と事前に話し合い、合意を得ること。
契約終了までの賃料支払いによる解約
特約がない場合でも、契約終了までの残存期間の賃料を一括で支払うことで解約が可能なケースもあります。ただし、残り期間が長い場合は高額な費用が発生するため、事前に貸主と交渉して費用負担を抑えることが求められます。
定期借家契約でテナントを借りるメリット・デメリット
定期借家契約は、契約期間があらかじめ決められており更新がないという特徴があります。貸主には大きなメリットがありますが、借主にとってもメリット・デメリットがあります。それぞれを把握し、自分の事業計画に合った判断をすることが重要です。
定期借家契約で借りるメリット
賃料が相場より安い可能性:定期借家契約では、途中解約が難しいという条件があるため、物件が敬遠されがちです。そのため貸主側は、周辺物件より賃料や初期費用を低く設定して借主を集めるケースがあります。特に、長期契約では値下げ交渉が成立しやすく、好条件で借りられる可能性があります。
更新料が不要:普通借家契約では、2年ごとに発生する更新料(通常は家賃の1カ月分程度)が必要ですが、定期借家契約には更新がないため、こうした費用がかかりません。10年契約の場合、更新料だけでも数カ月分の家賃が節約できることになります。
短期間の利用が可能:定期借家契約は、数カ月から半年といった短期間での契約が可能な物件もあります。期間限定のポップアップストアやサテライト店舗の出店に適しており、市場テストや実験的な店舗運営に活用できます。
審査が比較的緩やか:退去時期が事前に決まっているため、貸主にとってリスクが低く、普通借家契約よりも入居審査が緩やかになる傾向があります。初めて事業用物件を借りる人や事業歴の短い事業者にもチャンスがあります。
定期借家契約で借りるデメリット
途中解約が難しい:定期借家契約では、原則として契約期間中の解約ができません。やむを得ない事情がある場合でも、契約書に特約がない限り解約が認められない可能性があります。
再契約の可否が不確定:契約期間終了後に再契約を希望しても、貸主が応じるかどうかは保証されていません。また、再契約には初期費用(敷金、礼金、保証金など)が再度発生するため、コストが増える可能性があります。
賃料や契約条件の変更リスク:再契約が成立した場合でも、賃料の値上げや契約条件の変更が行われる可能性があります。これにより、事業計画に想定外の負担が発生する場合があります。
契約満了後の不確定性:期間満了後に新たな物件を探さなければならないリスクがあります。移転に伴う引っ越し費用や設備の再設置費用など、追加の負担を考慮する必要があります。
まとめ
定期借家契約は、短期利用やコスト削減を目指す場合に大きなメリットがありますが、長期的な事業運営では不確定要素が多いため、注意が必要です。契約前に条件を十分に確認し、将来の事業計画とリスクに応じて適切な選択をしましょう。契約に関するお困りごとなどございましたら弊社スタッフまでお気軽にお尋ねください。